もう、一人の布団になって、どれほど経つのだろうか。
そこそこの月日が経つとは思うのだが、いまだにしっくり来ない。
元来、私は寝ることが好きだった。
そのおかげでここまで大きく(183cm)なったのかもしれない。いや、それは違うか。
布団に、好きな人と入る。
左隣にいる彼女に、背を向けてもらう。
私は、それを後ろから包み込むようにして抱きしめる。
ほどなくして、柔らかいまどろみが私を包む。
とても安心した。とても幸せな時間だった。
いつもすぐそばにいた。
ずっと、ずっと好きでいたかった。
けれど、時が経ち、環境が変わったとき。
私も彼女も、それについて行けなかった。
彼女は必死だった。ともかく必死だった。
必死すぎて、自分以外を敵にしてしまった。
私は、彼女にとって「誰よりも理解してほしいのに、理解してくれない人」になっていた。
私は責められた。何をしても責められた。
仕事をしても、掃除をしても、食事も、友人の存在さえも。
彼女は全てが気に食わなかったのだろう。
そうこうしているうちに、愛情は憎しみへと変化していた。たぶん、お互いに。
若かった。
理想と現実のギャップに耐えられなかった。
彼女はきっと、思い描く自分の姿と、現実の自分との差が信じられず、ハリボテの見栄を張り、それを壊そうとする私を、言葉という刃で蹂躙した。
そして私は、優しい面がどんどん失われていく彼女と、かつての温かさを持った彼女との差に絶望し、世界を灰色に染め上げていった。
愛情が深かった分、裏返ったときの憎しみは、どんな鋭利な刃物よりも鋭く、ギラギラと黒く澱んだ光を放つ魔物のようだった。
今の時間へと戻る。
今日も、私はひとり布団に入る。
となりには誰もいない。
彼女は私に「愛する人と眠ることの幸せ」を教えてくれた。
そのおかげで、私はひとりで眠ることが、とても寂しくなってしまった。
いつかまた、私は誰かを愛し、その人と同じ空間で眠れるのだろうか。
そんな日が、くるのだろうか。
私に包まれることで、喜んでくれる人が、いるのだろうか。
そんな風に考える私をよそに、素知らぬ顔して陽はまた昇る。